こんにちは。
今回の豆知識のテーマは『CHムートンのあれこれ』についてです。
ボルドー地方を代表する数々のシャトーは、その長い歴史と、世界中で愛されて止まない素晴らしく個性的で魅力溢れる味わいで人々を虜にします。
シャトー・ムートン・ロートシルトは、ボルドー5大シャトーのひとつで、シャトー・ラフィット・ロートシルトと同じロートシルト一族の一つが所有するシャトーです。
今回の主役は『CHムートン』として、その魅力を面白くご紹介していきたいと思います。
目次
■CHムートンの歴史、男爵の名言■毎年違うラベルと、その報酬とは

■CHムートンの歴史、男爵の名言
ロスチャイルド家の3男で、ロンドン・ロスチャイルド家の礎を築いたネイサン・マイヤー・ロスチャイルドが1853年に購入したシャトー・ムートンは、1885年に行われたボルドー・メドック地区の格付けでは他の5大シャトーと違い、第2級でした。(ちなみにCHラフィットは5男のジェームス)この悔しさをムートンはラベルにこう記しています。
『第一級たり得ず、第二級を肯んせず、そはムートンなり』(=第一級にはなれなかったが、第二級では甘んじていられない、ムートンはムートンである)
その後、長きに渡り積極的な設備投資による品質向上に努め、さらには猛烈なロビー活動を展開して、1973年に念願の一級昇格を果すことができたのです。
またこの昇格時に男爵は、『今第一級なり、過去第二級なりき、されどムートンは不変なり』(=現在は第一級であるが、過去に第二級であった、しかしムートンは変わることがない)という言葉を残しています。
また犬型のラトゥールに対して、猫型のムートンといわれるように、このシャトーの造り出すワインは年によってバラつきがあると言われています。ブドウの出来がよい年にもあまり成功しないこともあれば、不作と呼ばれる年でも非凡なワインを生み出すことがあります。それらの理由からヨーロッパでの人気は今ひとつのようですが、日本での人気は高く商業的に成功しています。

■毎年違うラベルと、その報酬とは
このワインが商業的に成功した理由のひとつにラベルアートにあります。アートラベルが始まったのは1945年、毎年1人の画家に1枚の絵の作成を依頼してきました。
フランス人ではミロ、ピカソ、シャガール、コクトー、アメリカ人ではウォーホル、マザーウェル、ジョン・ヒューストンなどの著名な画家によってシャトー・ムートンのラベルが飾られました。
そして今もなおそのデザインに世界の目は向けられており、毎年ラベルの発表には大きく話題に取り上げられ、ワインコレクターのひとつの楽しみでもあります。
ラベルを依頼された画家たちへの報酬は、なんと金銭ではありません。
ピカソでも誰でもみんな、なんとワイン10ケース(120本)なのです。そのうちわけは、5ケース(60本)はその画家の描いたラベルの年のワイン、残りの5ケース(60本)は画家当人が望んだ収穫年のものになっているとのことです。
ちなみに、今までこのアートラベルには、日本人画家も過去に2度起用されています。
1979年は堂本尚郎氏と1991年のセツコ・バルテュス(出田節子)さん。
日本人初となる1979年は堂本氏は、ムートンから電話で「絵を描いて欲しい」との依頼を受け、描く場所について質問しました。壁画のようなスケールを想像していた氏は、「ワインボトルのラベルに」というムートンからの返事に戸惑い、「そんなところには描けない」と言って断ったそうです。
ところがその後、ラベルの歴史や実際のワインを見て驚き、急きょ、承諾の返事をしたとか。 奇しくもその年は日本での干支(えと)も「未(ひつじ)」でした。