こんにちは!
今回の豆知識のテーマは『厳しい冬の寒さが生み出す奇跡の美酒、アイスワイン』です。
デザートワインやデジェスティフ(食後酒)として利用される甘口ワインで、『貴腐ワイン』は有名です。
しかし同じく甘口ワインで、『アイスワイン』は、耳にしたことがあっても、飲んだことがない方は多いと思います。
なぜかというと、実はとても希少なのです。
今回は、そんな実はあまり知られていない『アイスワイン』について、素敵な誕生秘話から、その魅力について迫って行きたいと思います!

目次
■偶然から生まれた『奇跡』のワイン■アイスワインが希少で高級な訳
■日本でも造られたアイスワインはあるの?
■偶然から生まれた『奇跡』のワイン
今から200年以上前の1794年の冬、ドイツのフランコニアにある農場で、世界初のアイスワインが生まれました。その年、フランコニアは予想もしない霜におそわれ、ワイン用の熟した葡萄がそのまま放置されたために、すべて凍ってしまうというアクシデントに見舞われていました。
やむなく葡萄は処分することになったのですが、一部の葡萄を使ってワインを造ってみたところ、とても甘みの強い、芳醇な香りのワインが出来上がりました。
そうです、これがアイスワインの始まり、まさに偶然の産物なのです。
その後、一部の貴族が好んで愛飲するようになったため、「貴族のワイン」とも呼ばれ、高級品として製造されるようになります。

■アイスワインが希少で高級な訳
アイスワインが最高級ワインと言われる理由は、特別な製造方法にあります。アイスワイン用葡萄の栽培に一番大切なのは気候。
ワイン用葡萄の収穫時期といえば、ふつうは秋ですが、アイスワイン用の葡萄は12月から2月頃の真冬、それも気温がマイナス8度以下まで下がったときに限って収穫されます。
通常とは違い秋に葡萄を収穫せず、樹に房をつけたまま冬の到来を待つため、鳥類や昆虫の被害にあい、多くの農場が収穫減を余儀なくされてしまいます。
そして、凍っている間に葡萄を摘み取り搾汁する必要があるため、作業は真冬の極寒の早朝に全て手作業で行い、大変過酷な労働となってしまうのです。
もちろんそんな厳しい状況下で収穫するのには、ちゃんとした理由があります。
収穫されるまでの間、厳しい気候条件のもとで溶けたり凍ったりを繰り返すうちに、葡萄内の水分は徐々に減っていきます。
一方で果汁は凝縮されて濃度が高まり、そのため通常よりも強い甘みと香りを持つ濃厚なワインができるのです。
収穫した葡萄はすぐに凍ったまま圧力をかけて一気に搾られます。
すると葡萄に残った僅かな水分は凍ったままで、零下でも凍らない甘みと香りの凝縮された果汁だけがごくわずかに得られます。
その量は葡萄一房からわずかスプーン一杯程度、通常のワインと比べると約8分の1程度なのです。
そうして得られた大切な果汁は、6ヶ月間という通常のワインのおよそ8倍もの時間を掛けて丁寧に発酵させられ、ようやくアイスワインは出来上がるのです。
希少なワインなので価格は若干高めですが、厳しい条件下での収穫やその後の発酵にも通常のワインより長い期間をかけることを考えると納得できるでしょう。

■日本でも造られたアイスワインはあるの?
アイスワイン用の葡萄は、完熟して木になったままの状態で凍結する必要があります。しかもマイナス8度以下を記録した日の深夜から明け方にかけて摘みとらなければなりません。
厳密に言うと、国際商標登録されているアイスワインは、日本には存在しません。
つまりフランスのシャンパーニュ地方で作られたスパークリングしかシャンパンと呼べないように、カナダ・ドイツ・オーストリアで作られたものに限り許された名称なのです。
「アイスワイン」は英語圏の呼び名で、本場ドイツでは「アイスヴァイン(EISWEIN)」が正式名称です。
ちなみに、アイスバインとは言い間違えられやすいのですが、こちらはドイツの伝統料理で、塩漬けにした豚の脚を煮込んだものです。

まとめ
葡萄のもつ天然の甘みが凝縮された極上のアイスワイン。自然が育んだ最高級の完熟葡萄から生み出される最も贅沢なワインには、難しい言葉や知識はいりません。
ただただ、そのうっとりするような甘美な世界を堪能し、幸せなひとときを感じてください。